一般財団法人トヨタ・モビリティ基金が「移動の可能性を、すべての人に。」をコンセプトに、アイデアやソリューションの社会実装を目指すコンテスト「Moboility for ALL」。モータースポーツに焦点を当て、誰もが観戦を楽しめるアイデアの実現に、各チームが取り組みました。
2022年6月にアイデアの公募を実施して以降、一次選考を経た17のチームがコンテスト形式で進行中です。10月15日(土)・16日(日)、17チームが岡山国際サーキットおよび岡山トヨタPLATPORTに集合。各チームは実証実験を行い、最終選考に進むチームを決める選考も行われました。
10月16日(日)の岡山国際サーキットの様子をレポートしていきます。
繰り広げられる熱戦のもと、盛り上がる会場
実証実験二日目となる10月16日(日)は、「ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第6戦 『スーパー耐久レースin岡山』」の決勝レースが行われるとあって、15日(土)に比べさらに多くの人が訪れていました。
朝7:40からオープニングステージやスタートセレモニーのあと、8:30からは3時間に及ぶスーパー耐久レースの決勝レースが開始。レーシングカーが爆音を響かせサーキットを疾走します。
11:45~12:20には「ピットビューイング(レーシングカーの整備を行う場所で車両を間近で見られるイベント)」が催され、午後からも3時間の決勝レースがあるというスケジュールです。
イベント会場では車両等の展示があるほか、ミニ四駆コーナーやスタンプラリーといった家族で楽しめる企画も。岡山国際サーキットのイメージガール「PaRet(パレット)」等によるライブステージも華やかに開催されていました。
多くの人にとって、非日常を体験できる大きなイベントの中で、Mobility for ALLの実証実験もまた行われていたのです。
各チームが思いを形に Mobility for ALLの実証実験
午前中の決勝レースが開催される中、客席で実証実験を行ったのは、エヴィクサー株式会社、Not Impossible、株式会社電通、Field of Vision Technologies、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社です。
エヴィクサー株式会社は音響通信技術を活用した、光と同期して音が見える「光るTシャツ」を披露。法被のような形状の衣類の襟に着脱式のLEDがついています。選考委員達が実際にTシャツを着用すると、レーシングカーの爆音に合わせて一斉に光りました。
Not Impossibleは、アメリカ(ニューヨーク)のチームです。音響の技術を活用し、モータースポーツの音や興奮を誰もが一緒に楽しめるデバイスに挑戦。ベスト状の装置を付けると、レーシングカーの音に合わせて振動が伝わります。選考委員のほか、一般の方が着用している様子も見られました。
株式会社電通は音声実況AI「Voice Watch」を披露。走行データと中継映像からレースの実況音声をAIでリアルタイム生成し、視覚障がいがある方がレースを耳で楽しめます。
Field of Vision Technologiesはアイルランドのチームです。視覚障がいがある方がレースの状況を触覚で感じとることができるデバイスを開発しました。Not ImpossibleとField of Vision Technologiesは通訳者とともに実証参加者に解説をしていました。
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社は聴覚障がいを持つ方等に向けて、レーシングカーのエンジン音を振動と光に変換して届けられるよう、もともと製品化していた「SOUND HUG(サウンドハグ)」を改良。客席では白いボール状のデバイスを抱える人の姿が見られました。
そして11:30頃からはトヨタ自動車九州株式会社による遠隔でのZoomライブ配信がスタート。客席やピットビューイング、イベント会場等を案内し、現地以外の映像も交えながら、約2時間半、長期療養中の子ども達に向けて配信しました。
12:00頃、株式会社Cone・Xi、一般社団法人ソーシャルアクション機構による移動支援サービスの車両が到着し始めました。看護師不足の解消に向けた訪問看護師の移動支援の仕組みを活用し、障がいのある方も安心して岡山国際サーキットへ足を運ぶことができるようにという挑戦です。
到着した方達を案内するのは、学生ボランティアメンバーです。前日から各チームの取り組みを見学し、場内を理解した上で案内を実施しました。
午後からは株式会社Ashiraseの実証実験が行われました。振動で進む方向を知らせてくれる、靴装着型ナビゲーションシステム「あしらせ」を披露。視覚障がいを持つ方が客席から自動販売機まで移動しました。
そして14:30頃、株式会社ePARAの旅コミュニティ一行、27名が到着。「クロスライン -ボクらは違いと旅をする-」と題し、2泊3日の旅行を決行したのです。水色のユニフォームを着たメンバー達は一体感があり、旅をエンジョイしている様子が伝わりました。
おわりに
話を聞いてみると、Mobility for ALLの実証実験のため、カーレースイベントに今回初めて訪れたという方も多くいました。レース観戦やイベント会場のステージ、仲間との交流等、思い思いに非日常を楽しんでいる様子でした。
Mobility for ALLのコンセプトは「移動の可能性を、すべての人に。」です。会場に来るからこそ体感できる喜びを、多くの人が味わっているように見えました。そして、未来への可能性もまた、多くの人が実感できたのではないでしょうか。
Mobility for ALL 実証動画
実証実験の様子を、動画でも紹介します。