レースの音を耳で聴くだけでなく、触れて体で感じる!没入型観戦体験を実現する携帯型タッチベース端末

デバイス

視覚障がい者のモータースポーツファンは、レースの状況や様子を知るためにどのような方法を普段使っているか知っていますか。

多くの場合、テレビの音声多重放送やDVD・ブルーレイディスク等の映像ソフトでは、副音声で実況や解説等を聞いています。

Field of Vision Technologiesは、視覚障がい者達が“聴くだけ”ではなく、ドライバーがストレートを疾走し、コーナーを抜け、ライバルを追い越している様子を感じ取れる、没入型観戦体験を実現する携帯型タッチベース端末を開発しています。

視覚障がい者がレース観戦を楽しむために

どのようにプロジェクトを進めているのでしょうか。
担当者に聞きました。

視覚障がい者のスポーツ観戦を支援する触覚ソリューション

Mobility for ALLで取り組むプロジェクトの概要を教えてください。

現在、視覚障がい者がモータースポーツを観戦する場合、音声による解説が唯一の手段ですが、解説では生のレースのエネルギーや興奮を表現することはできません。

そこで私達は、視覚障がい者にもモータースポーツ観戦を楽しんでいただけるよう、携帯型タッチベース端末を開発し、聴覚だけでなく、実際にレースを体感していただけるようにしています。

どのような人のどのような課題を解決するプロジェクトですか。

現在、全世界で1億人以上の視覚障がい者のスポーツファンが、モータースポーツを含むスポーツ中継を音声解説でしか体験することができません。

視覚障がい者のスポーツファンの多くが実際に言っていたのですが、音声解説では試合やレースの臨場感や迫力が伝わってきません

今のところ、視覚障がい者がスポーツを観戦するための最後の大きな革新は、音声が主体であるラジオだったのです。でも、現在の最新技術革新を活かした、より良い解決方法があるはずです。

だから、私達は携帯型タッチベース端末を作っています。視覚障がい者がモータースポーツにアクセスし、より楽しめるようにしたいです。

、没入型観戦体験を実現する携帯型タッチベース端末
プロジェクトを立ち上げた、きっかけを教えてください。

とある口コミの動画を見たのがきっかけです。

その動画は、ある男性がサッカーの試合に友人を連れてきて、ボールの位置を手のひらでなぞることで試合の状況を実感し、より試合をイメージしやすくしている感動的なものでした。

動画に感動した私達は、「この体験をテクノロジーでより多くの人に届けることができないか」と考えました。そして、視覚障がい者のスポーツ観戦を支援する触覚ソリューションの開発に着手したのです。

プロジェクトを進める上で苦労した点はありますか。

苦労した点は、モータースポーツに適応させなければならなかったことです。

これまで私たちは、サッカーやオーストラリアン・ルール・フットボールなどの球技用のデバイスを作ったことがありました。しかし、モータースポーツのような競技に対応したデバイスを作るのは初めてだったのです。

そのため社内外を問わず、大幅なデザイン変更を余儀なくされました。しかしその甲斐あって、新しいデザインを世に送り出すことができ、大変うれしく思っています。

視覚障がい者のためのエンターテイメントに革命を起こしたい

開発の様子
10月15日・16日の岡山国際サーキットでは、どのような検証を行う予定ですか。

レース会場では、視覚障がい者が初めて私たちの新しいデバイスを“ライブ”で使用する予定です。

特に遅延に注意して、ライブ環境下でのデバイスのパフォーマンスを検証します。

そして何よりタッチ操作が、音声解説の補完として有用であると視覚障がい者が感じるかどうかを検証します。

体感者にどのような「体験」をしてほしいですか、またどのようなことを「感じて」ほしいですか。

直線を疾走するレーシングカーの動き、モーターが振動する音で伝わるスピードと回転数の上昇を感じてほしいです。

また先行車との差を体感・視覚化し、ゲームのように楽しめる感覚をつかんでほしい。音声では伝わらない部分を、触覚的な満足感で伝え、レースをシンプルに理解してもらいたいと考えています。

プロジェクトの技術、サービスの導入で、社会にどのような影響がもたらされると考えていますか。

私達は、この技術が社会に大きなインパクトをもたらすと信じています。

まず、視覚障がい者に、見えないからといってスポーツを楽しめないわけではないことを証明したいです。また、このプロジェクトをきっかけに、他のエンターテインメントもより利用しやすくなるようにしたいと考えています。

アクセシブル・テクノロジーは、日常生活における実用的な部分に重点を置いていますが、「楽しむ」ことに重点を置いたものはあまりありません。

私たちはそれを変え、視覚障がい者のためのエンターテイメントに革命を起こしたいのです。

今後やってみたいこと、展望を教えてください。

新しいデータフィードや触覚技術を取り入れ、より没入感のある体験を実現するために、私たちのデバイスのユーザー体験を繰り返し、改善し続けたいと考えています。

日本だけでなく、世界中のモータースポーツ会場で、視覚障がい者が気軽に利用できるようにしたいですね。また、F1への導入も視野に入れています。

そして最終的には、リビングルームで気軽に使える一般向けのデバイスを目指します。

おわりに

視覚障がい者がスポーツ観戦等を楽しむためには、一般的に自身の耳を使って“聴く”ことに限られています。ただし音声主体では、多くの情報は捉えられず楽しむのが難しい状況です。

そのように、Field of Vision Technologiesは“体感”を重視しデバイスを開発しています。実証実験では、多くのデータを取得することができることでしょう。

このプロジェクトが、より多くの視覚障がい者の助けになることを願います。

岡山国際サーキットday2

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