10月15日(土)・16日(日)に、岡山国際サーキットで開催された「ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第6戦 『スーパー耐久レースin岡山』」。客席やイベント会場にて、「Mobility for ALL」アイデアコンテストの一次選考を通過した17チームが最終選考に進むために実証実験を行いました。
中でも株式会社コンピュータサイエンス研究所・ LOOVIC株式会社・株式会社Ashiraseは、障がいのある方の自立した歩行を叶えるために、プロジェクトを進行しています。3チームはどのように実証実験を行っていたのでしょうか。選考を終えての感想等と合わせてレポートします。
音声案内とオペレーターによる案内の融合「Eye Navi」
株式会社コンピュータサイエンス研究所は、視覚障がいのある方の安心安全な歩行を可能にするアプリ「Eye Navi(アイナビ)」を開発しています。実証実験当日は開発中のEye Naviを使い、2つの方法で実証実験を行いました。
ひとつは、アプリでの音声案内です。客席からイベント会場までを移動しました。事前に会場内の地図や経路を独自に作成し、当日には曲がる箇所や目的地にビーコンを設置。既存の地図や点字ブロックがない場所での移動を可能にしました。
もうひとつはEye Naviのビデオ通話機能を用いた、オペレーターによるナビゲーションです。イベント会場内の展示ブースや売店で実証実験を行いました。展示ブースにはどのような物があるか、売店には何が売られているか、遠隔で人が道案内をしたり、場所の紹介をしたりしていました。
1人で歩いて楽しめることが希望に
実証実験を終えて、プロジェクト担当の髙田将平(たかた しょうへい)さんに話を聞きました。
また体験者からは、以下のような話を聞くことができました。
- 自分だけではこういったイベントに足を運ぶことはないかもしれないけど、Eye Naviがあったら安心。「1人でも歩いて楽しめるかも」と希望が湧きました。
- レースのイベントは車の音やステージの音、インフォメーションの声等たくさんの音があって、何を聞いたらいいのか分からなくなります。でもEye Naviは、スマートフォンを首から下げて音声を聞けるので、自分のすぐ近くで必要な情報を知るがことできました。
- 既存のマップよりも、会場内の横断歩道等 細やかな現場の情報をビデオ通話機能で得られる点が安心に繋がると思いました。
AIによるナビゲーションだけでなく、人と人とが双方向にコミュニケーションを取ることで、サーキット会場を一緒に楽しんでいるのが印象的でした。
視空間認知障がいの道迷いを解決する「LOOVIC」
LOOVIC株式会社は、視空間認知機能障がいにより道に迷いやすい方をサポートするデバイス「LOOVIC」を開発しています。クビにかけるネッククーラーのようなデザインで、スマートフォンとのペアリングと骨伝導による音声伝達が可能です。スマートフォンの画面で道を確認しなくても、目的地までの道を案内してくれます。
実証実験当日は、客席上の通路をLOOVICで道案内。視空間認知障がいのある方に使ってもらい、迷わず歩けることを実証していました。
レース中でも音声案内が聞こえる工夫を
実証実験後、代表取締役の山中亨(やまなか とおる)さんに話を聞きました。
視空間認知障がいのある体験者は、以下のような感想を話していました。
- LOOVICを触っているとブルブル震えるので、進む方向が分かりやすかったです。時々地図と照らし合わせながら、確認して歩くことができました。
- 道案内の振動に慣れていければ、どの方向に歩けばいいかをさらに判断しやすくなると思います。
会場に来てから分かった課題もある中で、円滑にナビゲーションする方法をギリギリまで考え抜いていたのが印象的でした。
足元を振動させる「あしらせ」で、直感で分かる道案内を
株式会社Ashiraseは、視覚障がい者向け歩行ナビゲーションデバイス「あしらせ」を開発しています。靴に装着し、振動させることで道案内をします。足に伝わる感覚から直感的に歩く方向が分かるデバイスです。
実証実験当日は道案内の目的地をサーキット会場の自動販売機に設定。視覚障がいのある方があしらせを使い、目的地まで歩くことができました。
商品化に向け、臨機応変な対応も見込む
実証実験を終えて、代表取締役の千野歩(ちの わたる)さんに話を聞きました。
また体験者からも話を聞きました。
- 振動が大きいので、どちらに進めばいいかが明確に分かりました。目的地に近づいたら振動が大きくなったので、分かりやすかったです。
- 音声案内よりも、振動のように体に訴えかける機能の方が分かりやすいと思います。
- 視覚障がい者は、どこに向かって歩けばいいかが分かりづらいけど、あしらせがあれば分かると思いました。将来的に、防災や観光にも活用できそうです。
音声案内がなくても振動のみで目的地に辿り着くことができる「あしらせ」。体験者自身が口を揃えて「分かりやすい」と話していたのが印象的でした。
おわりに
「自立した歩行を可能にしたい」との共通点があった、株式会社コンピュータサイエンス研究所・LOOVIC株式会社・株式会社Ashirase。
デバイスの特徴は違いますが、それぞれの方法で障害のある方にとっての歩行の不安を取り除いているようでした。選考の結果はもちろん、3チームの今後の展開に期待したいと思います。
Mobility for ALL 実証動画
実証実験の様子を、動画でも紹介します。